ソフトバンクは今、何の会社?通信会社ではなく“AI投資会社”になった理由

企業分析

「ソフトバンク」と聞くと、多くの人はスマホや携帯料金を思い浮かべるかもしれません。

しかし、株式市場で話題になるソフトバンクグループ(9984)は、いまや単なる通信会社ではありません。実態は、Arm、OpenAI、AIデータセンター、半導体、ロボティクスなどに投資する“AI時代の投資持株会社”です。

先に結論をまとめると、ソフトバンクグループは現在、次のような会社です。

  • 通信会社というより、世界中のAI関連企業に投資する会社
  • 収益の大きな変動要因は、保有株式や投資先の評価益・評価損
  • 注目テーマは、OpenAI、Arm、AI半導体、AIデータセンター
  • 直近の株価上昇は、OpenAI・ArmなどAI関連資産への期待が大きい

2026年3月期のソフトバンクグループは、売上高7兆7,986億円、親会社の所有者に帰属する純利益5兆227億円を計上しました。純利益は前期の1兆1,533億円から大きく増加しています。

ソフトバンクグループとソフトバンクは別会社

まず押さえておきたいのが、「ソフトバンクグループ」と「ソフトバンク」は別会社という点です。

ソフトバンクグループ株式会社は、証券コード9984の持株会社です。一方、スマートフォン・通信サービスを提供しているソフトバンク株式会社は、証券コード9434の上場子会社です。

ソフトバンクグループの決算上の報告セグメントは、主に以下の4つです。

  1. 持株会社投資事業
  2. ソフトバンク・ビジョン・ファンド事業
  3. ソフトバンク事業
  4. AIコンピューティング事業

同社は2026年3月期第3四半期に「AIコンピューティング事業」を新設しました。この中には、Arm、Ampere、Graphcoreなどが含まれます。

つまり、いまのソフトバンクグループを見るうえでは、携帯電話会社としてではなく、AI・半導体・データセンター・投資ファンドを組み合わせた企業グループとして理解する必要があります。

ソフトバンクグループは何で儲けている?

ソフトバンクグループの利益構造は少し特殊です。

トヨタのように車を売って利益を出す会社、ソニーのようにゲーム・音楽・映画・半導体などの事業で利益を積み上げる会社とは違い、ソフトバンクグループは保有する株式や投資先の価値変動が利益に大きく影響する会社です。

2026年3月期のセグメント利益を見ると、最も大きかったのはソフトバンク・ビジョン・ファンド事業です。同事業のセグメント利益は6兆4,446億円、投資損益は6兆9,919億円でした。

一方で、国内通信・LINEヤフー・PayPayなどを含むソフトバンク事業は、売上高7兆340億円、セグメント利益9,650億円を計上しています。

整理すると、ソフトバンクグループの稼ぎ方は大きく2つです。

1つ目は、通信・決済・ネットサービスなどの安定収益です。
これはソフトバンク株式会社、LINEヤフー、PayPayなどが担います。スマホ契約、法人向け通信、広告、EC、キャッシュレス決済など、比較的イメージしやすい事業です。

2つ目は、投資先の価値上昇による利益です。
こちらがソフトバンクグループらしい部分です。Arm、OpenAI、AI関連企業などの価値が上がると、会計上の投資利益が大きく増える可能性があります。逆に、投資先の価値が下がれば大きな損失が出ることもあります。

なぜソフトバンクはAIで注目されているのか

ソフトバンクグループがいま注目される最大の理由は、AIの中核領域に一気に資金を振り向けているからです。

特に重要なのが、以下の3つです。

1. OpenAIへの大型出資

ソフトバンクグループはOpenAIを最重要パートナーと位置づけています。2025年4月の発表では、同社はOpenAIに対して最大400億ドル規模の出資契約を結んだと説明しています。内訳は、ファーストクロージング100億ドル、条件次第でセカンドクロージング最大300億ドルです。

OpenAIはChatGPTを開発した企業であり、生成AIブームの中心的存在です。ソフトバンクグループは、OpenAIの成長を自社のNAV、つまり保有株式価値から調整後純有利子負債を差し引いた価値に取り込む狙いを示しています。

2. ArmというAI時代の“チップ設計会社”

Armは、スマートフォンやデータセンター向け半導体の設計技術で重要な会社です。ソフトバンクグループはArmを中核資産として保有しており、AI時代のコンピューティング需要の拡大がArmの成長期待につながっています。

2026年3月期の決算説明資料では、Armの時価総額が過去最大級の2,210億ドルと示されています。

AIが普及すると、膨大な計算処理が必要になります。そのため、GPUだけでなく、CPU、低消費電力チップ、専用半導体、データセンター向け設計技術の重要性も高まります。Armはその文脈で注目されているわけです。

3. AIデータセンター「Stargate」

AIモデルを動かすには、巨大なデータセンターと電力、半導体、ネットワークが必要です。

ソフトバンクグループはOpenAIとともに、米国内でAIインフラを構築する「Stargateプロジェクト」を進めると説明しています。

さらに、OpenAI、Oracle、ソフトバンクグループは、米国内で新たなStargateデータセンター拠点を設立する取り組みも発表しています。発表では、総額5,000億ドル規模の米国内AIインフラ投資コミットメントを達成し、上回る見込みとされています。

なぜ株価が上昇しているのか

直近でソフトバンクグループの株価が注目されている理由は、シンプルに言えばAI関連資産への期待が高まっているからです。

2026年5月22日時点で、ソフトバンクグループの株価は6,757円、前日比+718円、+11.88%でした。年初来高値は6,881円、年初来安値は3,365円です。

つまり、年初来安値から見ると、株価はおよそ2倍の水準まで上昇したことになります。

株価上昇の背景には、主に次の材料があります。

OpenAIの企業価値上昇期待

ソフトバンクグループはOpenAIへの大型出資を進めています。OpenAIの企業価値が高まれば、ソフトバンクグループの保有資産価値にもプラスに働く可能性があります。

2026年3月期の決算では、OpenAIフォワード契約に係るデリバティブで2,649億円の投資利益を計上したことも説明されています。

Armの成長期待

ArmはAIチップやデータセンター向けコンピューティングの文脈で注目されています。決算説明資料でも、Armは「AIチップ」として位置づけられており、時価総額の拡大が強調されています。

AIインフラ投資への期待

AIはソフトウェアだけでは成り立ちません。裏側には、半導体、サーバー、データセンター、電力、通信ネットワークが必要です。

ソフトバンクグループはOpenAI、Oracle、NVIDIAなどと連携し、Stargate UAEなどのAIインフラ構想にも関わっています。Stargate UAEでは、UAEアブダビの5GW規模のAIキャンパス内に、1GW規模のコンピュートクラスターを構築する計画が発表されています。

ソフトバンクグループのリスクも大きい

ただし、ソフトバンクグループは「AIで夢がある会社」とだけ見ると危険です。

同社の利益は、投資先の評価額や株価、為替、金利、資金調達環境に大きく左右されます。実際、2026年3月期の持株会社投資事業では、NVIDIA株式で3,391億円、Intelへの出資で2,786億円の投資利益を計上した一方、Tモバイル株式で6,568億円、アリババ株式で1,697億円の投資損失も計上しています。

また、AIコンピューティング事業は将来期待が大きい一方で、2026年3月期のセグメント損益は1,372億円の赤字でした。

つまり、ソフトバンクグループは、安定した通信会社というより、AI時代の勝ち筋に大きく賭ける投資会社です。上振れの可能性がある一方で、下振れリスクも大きい企業だと見るべきです。

まとめ:ソフトバンクは“AI時代の投資持株会社”になった

ソフトバンクグループは、もはや単なる通信会社ではありません。

通信事業はグループ内の安定収益として重要ですが、株式市場がソフトバンクグループに注目している理由は、そこだけではありません。

いまのソフトバンクグループの本質は、OpenAI、Arm、AI半導体、AIデータセンター、ロボティクスなどに投資するAI時代の投資持株会社です。

今後の注目ポイントは、次の3つです。

  1. OpenAIへの出資がどれだけ企業価値に反映されるか
  2. ArmがAI時代の半導体設計企業としてどこまで成長できるか
  3. StargateなどのAIインフラ投資が、将来の収益にどうつながるか

ソフトバンクグループは、良くも悪くも「未来のAI産業に大きく賭けている会社」です。

だからこそ、株価は大きく動きます。通信会社として見るのではなく、AI産業全体へのレバレッジがかかった企業として見ると、現在のソフトバンクグループの姿がかなり理解しやすくなります。


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