フィジカルAIとは?産業ロボットとの違いと日本企業の勝ち筋を解説

企業分析

最近、「フィジカルAI」という言葉をニュースやSNSで見かける機会が増えてきました。

生成AI、ロボット、ヒューマノイド、自動運転、AI半導体などのテーマと一緒に語られることが多く、次の成長産業として注目されています。

ただ、言葉だけ聞くと少し難しく感じるかもしれません。

「フィジカルAIとは何か?」
「ChatGPTのような生成AIとは何が違うのか?」
「産業ロボットとは何が違うのか?」
「中国が進んでいるという話は本当なのか?」
「日本企業に勝ち筋はあるのか?」
「注目企業はどこなのか?」

この記事では、フィジカルAIの基本、生成AIや産業ロボットとの違い、市場の見方、日本企業の勝ち筋を、投資テーマとして読みやすいように整理します。

この記事の結論

フィジカルAIとは、生成AIの知能をロボットや自動運転、ドローンなどの「動く機械」に載せ、現実世界で作業できるようにする技術です。

投資テーマとして見る場合、すぐに家庭用ロボットが広がるというより、まずは工場・物流・倉庫など、作業環境が決まっている現場から導入が進むと考えるのが現実的です。

日本企業は、ロボット本体、制御、精密部品、現場実装に強みがあります。NVIDIAやTeslaのような米国勢、中国の量産力と比べながら、日本企業がどこで勝てるのかを見ることがこの記事のポイントです。


フィジカルAIとは?

フィジカルAIとは、簡単にいうと「現実世界で動くAI」です。

これまでのAIは、主にデジタル空間で活躍してきました。たとえば、ChatGPTは文章を作成し、画像生成AIは画像を作り、音声AIは会話や文字起こしを行います。

一方、フィジカルAIは、現実世界を対象にします。

たとえば、ロボットがカメラで周囲を見て、物体の位置を判断し、アームを動かして箱を持ち上げる。自動運転車が道路状況を認識し、歩行者や信号を見ながら走行する。ドローンが建設現場や農地を自律的に飛行して点検する。

このように、AIが「見る」「理解する」「判断する」「動く」という一連の流れを、物理的な世界で実行するのがフィジカルAIです。

英語では、Physical AI、Embodied AI、AI Roboticsなどと呼ばれることもあります。

生成AIとフィジカルAIの違い

生成AIとフィジカルAIの違いを整理すると、以下のようになります。

種類主な役割具体例
生成AI文章・画像・音声・コードを作るChatGPT、画像生成AI、音声AI
フィジカルAI現実世界を認識して動くヒューマノイド、倉庫ロボット、自動運転車、ドローン
従来型産業ロボット決められた動作を正確に繰り返す溶接ロボット、塗装ロボット、搬送ロボット

生成AIは、知識労働やデジタル作業を変える技術です。

一方、フィジカルAIは、工場や物流、建設、介護、警備など、現実世界の作業を変える技術です。

ここが大きな違いです。

なぜ今、フィジカルAIが注目されているのか?

フィジカルAIが注目されている理由は、大きく4つあります。

1. 生成AIの進化でロボットが賢くなり始めた

1つ目は、生成AIやマルチモーダルAIの進化です。

従来のロボットは、基本的に人間があらかじめ教えた動作を繰り返すことが得意でした。これをティーチングといいます。

しかし、最近のAIは、画像、音声、文章、センサー情報などを組み合わせて理解できるようになっています。

たとえば、「この箱を棚に置いて」「赤い部品を取って」「このエリアを片づけて」といった指示を、ロボットが言葉と視覚情報を組み合わせて理解する方向に進んでいます。

NVIDIAは2025年に、ヒューマノイド向けの基盤モデル「Isaac GR00T N1」を発表しました。これは、ヒューマノイドロボットに一般的なスキルや推論能力を持たせるための基盤モデルとされています。

つまり、AIの進化によって、ロボットが単なる機械から「状況を理解して動く存在」へ近づき始めているのです。

2. シミュレーション技術が進化した

2つ目は、シミュレーション技術の進化です。

ロボットを現実世界だけで訓練するのは、時間もコストもかかります。さらに、失敗すれば機械が壊れたり、人に危険が及んだりする可能性もあります。

そこで重要になるのが、仮想空間での訓練です。

ロボットをデジタル上のシミュレーション環境で何百万回も動かし、うまくいく動作を学習させる。そこで得た学習結果を、現実のロボットに移す。

このような流れが進むことで、フィジカルAIの開発スピードが上がっています。

NVIDIAは、Omniverse、Isaac、Cosmosなどを通じて、ロボットや自動運転などのフィジカルAI開発基盤を強化しています。

3. 人手不足が深刻化している

3つ目は、人手不足です。

日本では、製造業、物流、建設、介護、小売、警備など、多くの業界で人手不足が深刻になっています。

特に、重いものを運ぶ作業、夜間作業、危険作業、単純作業などは、人が集まりにくい分野です。

こうした領域では、ロボットやAIを活用するニーズが高まっています。

ロイターが2026年5月に報じた調査では、日本企業の約3分の1がAIロボットをすでに使用、導入予定、または導入検討しているとされています。用途としては製造分野が最も多く、危険作業や接客分野での活用も挙げられています。

フィジカルAIは、人を完全に置き換えるというよりも、人手不足の現場で人間を補完する技術として期待されています。

4. 中国が急速に伸びている

4つ目は、中国の台頭です。

中国は、すでに産業用ロボットの世界最大市場です。

国際ロボット連盟、IFRのWorld Robotics 2025によると、2024年の世界の産業用ロボット導入台数は約54.2万台でした。そのうち中国は約29.5万台を導入し、世界全体の54%を占めました。さらに、中国国内では初めて中国メーカーのシェアが外資系を上回り、57%になったとされています。

つまり、中国は「ロボットをたくさん使う国」から、「ロボットをたくさん作る国」へ移行しつつあります。

この流れは、フィジカルAIでも大きな意味を持ちます。

ロボットは、AIモデルだけでなく、モーター、減速機、センサー、バッテリー、制御装置、筐体、量産技術が必要です。中国はこの製造サプライチェーンに強みがあります。

産業ロボットとフィジカルAIの違い

フィジカルAIを理解するうえで重要なのが、従来の産業ロボットとの違いです。

産業ロボットは、工場の中で長く使われてきました。自動車工場の溶接、塗装、搬送、半導体や電子部品の製造装置などが代表例です。

従来の産業ロボットは、以下のような作業が得意です。

・決められた場所で作業する
・決められた動きを繰り返す
・高精度で作業する
・長時間安定して稼働する
・人間より速く、正確に作業する

一方で、従来の産業ロボットは、想定外の変化に弱いという課題があります。

たとえば、部品の位置が少しずれる、箱の向きが毎回違う、人間が近くを通る、作業内容が頻繁に変わる、といった環境では難易度が上がります。

フィジカルAIが目指しているのは、こうした「あいまいな現場」への対応です。

安川電機は、AIロボット「MOTOMAN NEXT」について、AIによって「状況を理解し、自ら判断して動く」産業用ロボットと説明しています。従来の産業用ロボットが、人が教えた動作を正確に繰り返すことを得意としていたのに対し、MOTOMAN NEXTは、周辺状況に合わせて判断・計画しながら作業を完結させることを目指しています。

つまり、産業ロボットとフィジカルAIの違いは、ざっくり言うと次の通りです。

項目従来の産業ロボットフィジカルAI
得意な作業決まった作業の反復状況に応じた作業
環境整備された工場工場、倉庫、屋外、家庭など
指示方法プログラム、ティーチング言語指示、画像認識、AI判断
強み速い、正確、安定柔軟、自律的、応用範囲が広い
課題変化に弱い安全性、コスト、信頼性

実用化はいつ?本当に普及するのか?

フィジカルAIは大きな期待を集めていますが、実用化には段階があります。

個人的には、次のような時間軸で考えるとわかりやすいです。

2025年〜2027年:工場・物流で実証と初期導入

まずは、工場や倉庫など、作業環境がある程度決まっている場所で導入が進むと考えられます。

具体的には、以下のような作業です。

・箱や部品の搬送
・倉庫でのピッキング
・工場内の部品供給
・検査作業
・危険作業の代替
・夜間や休日の省人化

この段階では、まだ万能ロボットというよりも、特定作業に特化したAIロボットが中心になるでしょう。

2028年〜2030年:一部の現場で商用導入が拡大

次の段階では、ロボットの価格が下がり、AIモデルの性能も上がり、より多くの現場で商用導入が進む可能性があります。

特に、人手不足が深刻な物流、製造、建設、介護周辺業務では、導入メリットが大きくなりやすいです。

ただし、現場ごとのカスタマイズは残ります。

同じ倉庫でも、扱う商品、棚の高さ、通路幅、作業フロー、安全基準は異なります。そのため、フィジカルAIはソフトウェアのように一瞬で世界中に広がるというより、現場導入に時間がかかる産業だと考えたほうがよいです。

2030年代:本格普及の可能性

2030年代になると、ヒューマノイドやAIロボットのコストが下がり、導入事例も増え、本格普及に向かう可能性があります。

Goldman Sachsは、ヒューマノイドロボット市場について、2035年に380億ドル、出荷台数140万台規模になる可能性があると予測しています。

ただし、これはあくまで予測です。

フィジカルAIの普及には、安全性、耐久性、電池性能、保守体制、事故時の責任、法規制、導入コストなど、多くの課題があります。

そのため、「すぐに人間の仕事が全部ロボットに置き換わる」と考えるのは早計です。

現実的には、まずは工場・物流・危険作業・単純作業から導入が進み、徐々に用途が広がると見るべきです。

市場規模はどれくらいになる?

フィジカルAIの市場規模を考えるときは、まだ定義が固まりきっていない点に注意が必要です。

「フィジカルAI市場」という言葉だけで見ると、調査会社によって対象範囲が異なります。ヒューマノイドだけを含む場合もあれば、AIロボット、サービスロボット、自動運転、ドローン、産業ロボットまで含める場合もあります。

そのため、この記事では関連市場を分けて整理します。

産業用ロボット市場

産業用ロボットは、フィジカルAIの土台となる市場です。

IFRによると、2024年の世界の産業用ロボット導入台数は約54.2万台でした。中国、日本、米国、韓国、ドイツの5か国で世界導入台数の約80%を占めています。

この市場はすでに大きく、日本企業も強い領域です。

AIロボット市場

MarketsandMarketsは、AIロボット市場について、2025年の61.1億ドルから2030年には333.9億ドルへ成長すると予測しています。年平均成長率は40.4%です。

これはかなり高い成長率です。

もちろん予測には幅がありますが、AIロボットが今後の成長分野として見られていることは間違いありません。

ヒューマノイドロボット市場

ヒューマノイドロボットについては、Goldman Sachsが2035年に380億ドル、出荷台数140万台規模になる可能性を示しています。

ヒューマノイドは、人間に近い形をしたロボットです。

人間向けに作られた工場、倉庫、オフィス、家庭などで動かしやすいというメリットがあります。一方で、二足歩行、バランス制御、手先の器用さ、安全性、コストなど、技術的なハードルも高いです。

市場規模を見るときの注意点

フィジカルAI関連市場は、今後大きく伸びる可能性があります。

ただし、株式テーマとして見る場合は、過度な期待に注意が必要です。

新しいテーマでは、将来性だけが先行して、実際の売上や利益が追いつかないケースもあります。

企業分析では、以下の点を見ることが重要です。

・すでに売上があるのか
・顧客企業はどこか
・量産体制はあるのか
・ロボット本体だけでなく、保守・サービス収益があるのか
・AIモデル、半導体、部品、SI、現場導入のどこで稼ぐ企業なのか
・研究開発費を回収できるビジネスモデルなのか

中国が進んでいるのは本当か?

結論からいうと、中国はかなり進んでいます。

特に強いのは、以下の3点です。

・ロボットの導入台数
・量産力
・低価格化

先ほども触れた通り、2024年の産業用ロボット導入台数では、中国が世界全体の54%を占めました。中国の稼働中ロボット台数は200万台を超えており、世界最大のロボット市場です。

さらに、中国政府はヒューマノイドロボットを将来産業として位置づけています。

中国国務院新聞弁公室によると、中国は2025年までにヒューマノイドロボットの初歩的なイノベーションシステムを構築する方針を示しています。

中国は、EV、電池、太陽光パネル、ドローンなどでも、政府支援、量産力、サプライチェーン、価格競争力を武器に世界で存在感を高めてきました。

ロボットでも同じような流れが起きる可能性があります。

中国企業の特徴

中国企業の特徴は、開発スピードと価格の低さです。

ヒューマノイドや四足歩行ロボットの分野では、Unitree、AgiBot、Fourier Intelligence、Deep Robotics、EngineAIなどの企業が注目されています。

中国勢は、完成品ロボットだけでなく、モーター、センサー、LiDAR、バッテリー、制御部品などのサプライチェーンも国内に抱えています。

そのため、価格を下げやすく、量産にも強いのが特徴です。

一方で、すべての企業が生き残るとは限りません。

ロボットは、デモ動画では派手に見えても、実際の現場で安定稼働させるのは非常に難しい分野です。耐久性、安全性、保守体制、顧客サポート、現場への導入力が重要になります。

日本の立ち位置は?

では、日本はフィジカルAIで遅れているのでしょうか。

結論としては、日本は「AIの頭脳」では米国や中国に劣る部分がありますが、「ロボットの身体」と「現場実装」では強みがあります。

日本は、産業用ロボット、FA、精密機械、制御機器、モーター、減速機、センサー、工作機械などに強い企業を多く持っています。

代表的な企業には、以下があります。

・ファナック
・安川電機
・川崎重工業
・オムロン
・キーエンス
・三菱電機
・THK
・ナブテスコ
・ハーモニック・ドライブ・システムズ
・SMC
・村田製作所
・日本電産
・ミネベアミツミ

たとえば、ファナックは産業用ロボット、CNC、サーボモーターなどに強みがあります。ファナックの統合報告書2025によると、ロボット部門の売上は3,295億円で、連結売上高の41.3%を占めています。

安川電機は、AIロボット「MOTOMAN NEXT」を展開しています。同社のYASKAWA Report 2025では、NVIDIAのGPUを標準搭載したAIロボティクスとしてMOTOMAN NEXTに言及しています。

つまり、日本企業はフィジカルAIそのものの主役になれる可能性があります。

ただし、課題もあります。

それは、AI基盤モデルや大規模データ活用の分野で、米国や中国の企業が先行していることです。

フィジカルAIでは、ロボット本体だけでなく、AIモデル、シミュレーション、データ、ソフトウェア、クラウド、半導体が重要になります。

日本企業が勝つには、従来のハードウェアの強みに、AIとソフトウェアをどれだけ組み合わせられるかが重要になります。

日本企業の勝ち筋

日本企業の勝ち筋は、AIモデル単体でNVIDIAやOpenAI、中国のAI企業と正面から戦うことではないかもしれません。

むしろ、以下のような領域に強みがあります。

1. ロボット本体

産業用ロボットでは、日本企業は長年の実績があります。

ファナック、安川電機、川崎重工業などは、世界の製造現場で使われるロボットを提供してきました。

フィジカルAIが進化しても、実際に動くロボット本体、関節、モーター、制御、耐久性、安全設計は不可欠です。

2. 精密部品

ロボットには、多くの精密部品が使われます。

たとえば、減速機、ベアリング、直動ガイド、センサー、モーター、制御機器などです。

ヒューマノイドロボットが普及すれば、関節部分に使われる部品の需要が増える可能性があります。

この領域では、THK、ナブテスコ、ハーモニック・ドライブ・システムズ、ミネベアミツミ、日本電産などが関連企業として見られます。

3. 現場実装力

ロボットは、買って置けばすぐに動くわけではありません。

工場や倉庫のレイアウト、作業工程、安全基準、既存設備との接続、保守体制などを考える必要があります。

この現場実装力は、日本企業が得意とする分野です。

特に、製造業の現場を深く理解しているFA企業やロボットSIerは、フィジカルAI時代でも重要な役割を担う可能性があります。

4. 品質と安全性

フィジカルAIは、現実世界で動くため、安全性が非常に重要です。

ソフトウェアのバグで文章が間違うのとは異なり、ロボットのミスは事故につながる可能性があります。

そのため、製造品質、安全設計、保守、信頼性の高さは大きな競争力になります。

この点でも、日本企業には強みがあります。

注目企業一覧

ここからは、フィジカルAI関連で注目される企業を整理します。

投資推奨ではなく、業界研究としての注目企業です。

NVIDIA

NVIDIAは、フィジカルAIの中心企業の一つです。

同社はAI半導体だけでなく、ロボット開発基盤であるIsaac、シミュレーション基盤のOmniverse、世界モデルのCosmos、ヒューマノイド向け基盤モデルのIsaac GR00Tなどを展開しています。

フィジカルAIでは、ロボットが現実世界で動く前に、仮想空間で学習・検証することが重要になります。

そのため、NVIDIAは単なる半導体企業ではなく、ロボット開発のプラットフォーム企業としても注目されています。

Tesla

Teslaは、ヒューマノイドロボット「Optimus」を開発しています。

Teslaの強みは、自動運転で培ったAI、センサー、制御、量産技術をロボットに応用できる可能性がある点です。

ただし、Optimusが実際に大きな売上や利益を生むまでには、まだ時間がかかると考えられます。

Figure AI

Figure AIは、ヒューマノイドロボット企業として注目されています。

BMWの工場での実証などが話題になり、ヒューマノイドの商用化に近い企業の一つとして見られています。

ヒューマノイドは、工場や倉庫など人間向けに作られた環境で作業しやすい可能性があります。

Agility Robotics

Agility Roboticsは、二足歩行ロボット「Digit」で知られる企業です。

物流や倉庫での搬送作業など、比較的実用化に近い領域で注目されています。

Unitree

Unitreeは、中国のロボット企業です。

四足歩行ロボットやヒューマノイドで知られ、比較的低価格なロボットを展開している点が特徴です。

中国企業の中でも、低価格化と量産力を象徴する企業の一つです。

ファナック

ファナックは、日本を代表するFA・産業用ロボット企業です。

CNC、サーボモーター、産業用ロボットに強く、工場自動化の中核企業です。

フィジカルAIの時代でも、ロボット本体、制御、保守サービスの強みを活かせる可能性があります。

安川電機

安川電機は、サーボモーター、インバータ、産業用ロボットに強い企業です。

AIロボット「MOTOMAN NEXT」を展開しており、フィジカルAIに近い取り組みを行っている日本企業の一つです。

川崎重工業

川崎重工業は、産業用ロボットに加えて、医療ロボット、ロボットアーム、ヒューマノイド関連技術などを持つ企業です。

重工業、医療、製造現場など幅広い領域でロボット技術を活用できる可能性があります。

キーエンス

キーエンスは、センサー、画像処理、測定機器、FA機器に強い企業です。

フィジカルAIでは、ロボットが現実世界を正確に認識する必要があります。

そのため、画像処理、センサー、検査機器の重要性は高まる可能性があります。

オムロン

オムロンは、制御機器、センサー、FA、自動化機器に強みがあります。

工場自動化や制御領域での実績があり、フィジカルAI時代にも関連度の高い企業です。

THK

THKは、直動案内機器で知られる企業です。

ロボットや産業機械が正確に動くためには、直動部品や機械要素部品が重要です。

フィジカルAI関連では、ロボットの身体を支える部品メーカーとして注目されます。

ナブテスコ

ナブテスコは、精密減速機に強い企業です。

減速機は、ロボットの関節部分に使われる重要部品です。

ヒューマノイドや産業用ロボットの普及が進めば、関連需要が増える可能性があります。

ハーモニック・ドライブ・システムズ

ハーモニック・ドライブ・システムズは、精密減速機で知られる企業です。

小型・軽量・高精度な減速機は、ロボットの関節制御に欠かせない部品です。

ヒューマノイドや協働ロボットの普及に関連する企業として見られます。

フィジカルAIのバリューチェーン

フィジカルAIは、1社だけで完結する産業ではありません。

複数のレイヤーで構成されています。

上流から整理すると、以下のようになります。

  1. AI半導体
  2. AI基盤モデル
  3. シミュレーション環境
  4. ロボットOS・制御ソフト
  5. センサー・カメラ・LiDAR
  6. モーター・減速機・アクチュエーター
  7. ロボット本体
  8. ロボットSIer
  9. 工場・物流・建設・医療などの導入先

この中で、NVIDIAはAI半導体、基盤モデル、シミュレーション環境で強みを持っています。

日本企業は、ロボット本体、制御機器、精密部品、現場実装で強みがあります。

中国企業は、ロボット本体の量産、低価格化、サプライチェーンで強みがあります。

企業分析では、どの企業がバリューチェーンのどこで稼ぐのかを見ることが重要です。

フィジカルAIで需要が増えそうな職種

このテーマは、年収やキャリアの観点でも注目です。

フィジカルAIが広がると、以下のような職種の需要が高まる可能性があります。

・AIエンジニア
・ロボット制御エンジニア
・組込みソフトウェアエンジニア
・機械設計エンジニア
・電気設計エンジニア
・画像認識エンジニア
・センサー開発エンジニア
・FAエンジニア
・ロボットSIer
・データエンジニア
・安全設計・品質保証
・技術営業

特に、AIとハードウェアの両方を理解できる人材は希少です。

これまでのAIブームでは、Web系エンジニアやデータサイエンティストが注目されました。

フィジカルAIでは、機械、電気、制御、組込み、製造現場の知識を持つ人材の価値も高まる可能性があります。

日本の製造業で働くエンジニアにとっては、追い風になるテーマかもしれません。

フィジカルAIのリスクと課題

フィジカルAIは将来性のある分野ですが、課題も多いです。

1. 安全性

最大の課題は安全性です。

ロボットは現実世界で動くため、人や設備に接触する可能性があります。

AIが判断を誤った場合、事故につながるリスクがあります。

そのため、工場や倉庫で使う場合でも、安全基準、停止機能、監視体制、責任範囲の明確化が必要です。

2. コスト

ロボットは高価です。

本体価格だけでなく、導入費用、カスタマイズ費用、保守費用、教育費用もかかります。

人件費削減効果があっても、投資回収に時間がかかる場合があります。

特に中小企業にとっては、初期投資が大きなハードルになります。

3. 現場ごとのカスタマイズ

ロボットは、ソフトウェアのようにコピーしてすぐ使えるものではありません。

工場や倉庫ごとに、作業内容、設備、レイアウト、安全基準が異なります。

そのため、導入には現場ごとの調整が必要です。

ここがフィジカルAIの難しさです。

4. 耐久性

ロボットは、長時間安定して動く必要があります。

デモではうまく動いても、実際の現場で毎日、長時間、安定稼働できるかは別問題です。

製造業の現場では、信頼性と保守性が非常に重視されます。

5. 法規制と責任問題

ロボットが事故を起こした場合、責任は誰が負うのか。

メーカーなのか、ソフトウェア開発会社なのか、導入企業なのか、現場管理者なのか。

このような法制度や責任分担の整備も必要になります。

フィジカルAIは投資テーマとしてどう見るべきか?

フィジカルAIは、長期的には大きな投資テーマになる可能性があります。

ただし、短期的なブームには注意が必要です。

AI、ロボット、ヒューマノイドという言葉がつくだけで株価が上がる場面もありますが、実際に利益を出せる企業は限られる可能性があります。

投資テーマとして見るなら、以下の3つに分けて考えるとよいです。

1. プラットフォーム企業

NVIDIAのように、AI半導体、開発基盤、シミュレーション環境を提供する企業です。

フィジカルAI市場全体が伸びれば、広く恩恵を受ける可能性があります。

2. ロボット本体メーカー

ファナック、安川電機、川崎重工業、Tesla、Figure AI、Unitreeなどが該当します。

実際にロボットを作る企業です。

ただし、本体販売だけでは利益率が低くなる可能性もあるため、保守・サービス・ソフトウェア収益が重要になります。

3. 部品・周辺機器メーカー

減速機、モーター、センサー、カメラ、制御機器、電池などを提供する企業です。

ロボットの普及が進めば、複数のメーカーに部品を供給する企業が恩恵を受ける可能性があります。

日本企業は、この領域に強みがあります。

まとめ:フィジカルAIは次の成長産業になる可能性が高い

フィジカルAIとは、ロボットや自動運転車、ドローンなどを通じて、現実世界で「見て、考えて、動く」AIのことです。

生成AIがデジタル空間の仕事を変えたように、フィジカルAIは工場、物流、建設、医療、介護、警備など、現実世界の作業を変える可能性があります。

ただし、すぐに万能ロボットが普及するわけではありません。

まずは、工場や倉庫など、作業環境がある程度決まっている現場から導入が進むと考えられます。

市場規模を見ると、AIロボット市場は2030年に333.9億ドル、ヒューマノイドロボット市場は2035年に380億ドル規模になるとの予測もあります。

中国はロボット導入台数、量産力、低価格化で急速に存在感を高めています。

一方、日本は産業用ロボット、制御機器、精密部品、現場実装に強みがあります。

フィジカルAI時代の企業分析では、NVIDIAやTeslaのような派手な企業だけでなく、ファナック、安川電機、川崎重工業、キーエンス、オムロン、THK、ナブテスコ、ハーモニック・ドライブ・システムズのような日本企業にも注目する価値があります。

フィジカルAIは、AIとロボットが本格的に融合する次の成長テーマです。

今後の業界研究では、「AIの頭脳」だけでなく、「ロボットの身体」「現場への導入力」「部品サプライチェーン」まで見ていくことが重要になりそうです。


コメント

タイトルとURLをコピーしました