電通は何の会社?何で儲けているのか、なぜ世間から嫌われるのか

電通と聞くと、多くの人は「日本最大の広告代理店」というイメージを持つのではないでしょうか。

テレビCM、新聞広告、企業キャンペーン、イベント、スポーツ大会、芸能・エンタメなど、電通は日本の広告・マーケティング業界で圧倒的な存在感を持つ会社です。

一方で、ネット上では、

「電通って結局、何をしている会社なの?」
「なぜそんなに儲かるの?」
「中抜きしているイメージがあるけど実際どうなの?」
「最近赤字って聞いたけど大丈夫?」

といった疑問も多く見られます。

結論から言うと、電通グループは単なる広告代理店ではありません。

現在の電通は、広告、マーケティング、デジタル、DX、コンサルティング、スポーツ、エンタメなどを組み合わせて、企業の成長を支援する会社です。

ただし、2025年12月期には親会社の所有者に帰属する当期損失が3,276億円となり、大きな赤字を計上しました。赤字の主な理由は、海外事業に関するのれんの減損です。つまり、本業が完全に崩壊したというより、過去の海外買収に対する期待値を大きく見直した結果といえます。

この記事では、電通が何の会社なのか、何で儲けているのか、なぜ嫌われやすいのか、そして赤字でも大丈夫なのかを、初心者にも分かりやすく解説します。


この記事のポイント

電通は、広告枠を売るだけの会社ではありません。企業のマーケティング戦略、テレビCMやWeb広告、デジタル広告、データ活用、イベント、スポーツ・エンタメ、DX支援まで幅広く手がけています。

2025年12月期は、最終損益が3,276億円の赤字となりました。ただし、恒常的な事業の実力を見るための調整後営業利益は1,725億円ありました。赤字の主因は、海外事業に関するのれん減損です。

2026年1〜3月期は、収益3,571億円、売上総利益2,950億円、営業利益649億円、親会社の所有者に帰属する四半期利益401億円となっており、黒字に戻っています。

一方で、公共案件における再委託構造、東京五輪をめぐる独占禁止法関連の問題、海外事業の低迷、2025年度・2026年度の無配など、注意すべき点も多い会社です。


電通は何の会社?

電通は、ひとことで言えば企業の商品やサービスが売れる仕組みをつくる会社です。

昔ながらのイメージでは、電通はテレビCMや新聞広告の枠を企業に販売する広告代理店です。

たとえば、飲料メーカーが新商品を発売するとします。

そのときに電通は、

どのようなCMを作るか、
どのテレビ番組で流すか、
どの芸能人やインフルエンサーを起用するか、
SNSでどう話題化するか、
店頭キャンペーンをどう設計するか、
広告効果をどう測定するか、

といったことを総合的に支援します。

つまり、電通は単に「広告枠を売る会社」ではなく、企業のマーケティング活動全体を支える会社です。

現在の電通グループは、広告・クリエイティブだけでなく、データ、テクノロジー、コンサルティング、顧客体験設計などを組み合わせた成長支援を掲げています。中期経営計画でも、過去のM&A偏重を見直し、事業ポートフォリオを再構築して成長軌道へ戻す方針を示しています。


電通の事業内容をざっくり整理

電通の事業は、分かりやすく言うと以下のように整理できます。

領域内容
広告・メディアテレビCM、新聞広告、雑誌広告、Web広告、SNS広告など
クリエイティブCM制作、コピー、ブランド設計、デザインなど
マーケティング商品をどう売るか、誰に届けるかを考える
デジタル広告Google、SNS、動画広告、運用型広告など
DX・データ活用顧客データ分析、EC支援、アプリ、CRMなど
コンサルティング企業の事業成長やブランド戦略を支援
スポーツ・エンタメスポンサー、イベント、放映権、コンテンツ関連など

こう見ると、電通は「広告会社」というより、企業の売上を伸ばすための総合支援会社に近い存在です。

たとえば、ソニーが家電メーカーからエンタメ・半導体企業へ変化したように、電通も昔ながらの広告代理店から、マーケティングとデジタルを組み合わせた企業へ変わろうとしています。


電通は何で儲けている?

電通の儲け方は、ざっくり言うと企業の広告・マーケティング活動を支援し、その対価として手数料や報酬を得るという仕組みです。

広告代理店の古典的なビジネスモデルは、広告主とメディアの間に入ることでした。

たとえば、企業がテレビCMを出したい場合、電通がテレビ局との間に入り、広告枠を確保します。そして、広告主から広告費を受け取り、その一部が電通の収益になります。

ただし、今の電通はそれだけではありません。

現在は、広告枠の販売に加えて、以下のような仕事でも収益を得ています。

マーケティング戦略の立案
テレビCMやWeb広告の企画・制作
SNSキャンペーンの設計
デジタル広告の運用
データ分析
顧客管理システムの導入支援
ECサイトやアプリの改善
イベントやスポーツビジネスの運営
企業ブランドの再構築

つまり、電通は広告費の一部だけで儲けているのではなく、企業のマーケティング予算全体に関わることで収益を得ています。


電通の強みは何か?

電通の強みは、主に3つあります。

1. 日本市場での圧倒的な存在感

電通は、日本の広告・マーケティング業界で非常に大きな存在感を持っています。

テレビ局、新聞社、出版社、芸能事務所、スポーツ団体、大企業との関係性が強く、大規模なキャンペーンをまとめる力があります。

広告は、単に良いCMを作れば成功するわけではありません。

テレビ、Web、SNS、店頭、イベント、PRなどを組み合わせて、消費者に何度も接触する必要があります。電通は、この複雑なプロジェクトをまとめる力に強みがあります。

2. 大企業のマーケティングに深く入り込んでいる

電通の顧客は、大手企業が中心です。

大企業は広告予算が大きく、商品数も多く、販売チャネルも複雑です。そのため、広告運用だけでなく、ブランド戦略、商品戦略、データ分析、イベント、キャンペーンまで一括で任せられる会社が必要になります。

電通は、こうした大企業のマーケティング活動に深く入り込むことで、継続的な収益を得ています。

3. スポーツ・エンタメ領域にも強い

電通は、スポーツやエンタメ領域にも強みを持っています。

スポーツ大会、スポンサーシップ、イベント、コンテンツビジネスなどは、広告会社の中でも特殊なノウハウが必要です。

企業にとって、スポーツやエンタメとのタイアップはブランド価値を高める重要な手段です。電通はこの領域でも大きな存在感を持っています。


電通はなぜ嫌われるのか?

電通が嫌われやすい理由は、単に「広告会社だから」ではありません。

むしろ、電通が嫌われる背景には、影響力の大きさ、公共案件への関与、再委託構造、中抜きイメージ、不透明さへの不信感があります。

1. 「中抜き」のイメージが強い

世間的に電通が嫌われる理由として、一番分かりやすいのは「中抜き」のイメージだと思います。

ここでいう中抜きとは、厳密な法律用語ではなく、世間一般の感覚としては、
仕事を受けた会社が、実際の作業を下請けや再委託先に回し、自社は間に入って手数料を取っているように見える構造
を指して使われることが多いです。

広告やイベントの仕事では、そもそも多くの会社が関わります。

CM制作会社、映像制作会社、イベント会社、印刷会社、Web制作会社、データ分析会社、システム会社など、実務を担う会社は多岐にわたります。

そのため、電通のような大手広告代理店が全体を取りまとめ、実作業を専門会社に発注すること自体は、ビジネスとして珍しいことではありません。

問題は、それが公共案件や税金が関わる仕事になると、
「本当にその手数料は妥当なのか」
「再委託が多すぎるのではないか」
「実際に価値を出しているのは誰なのか」
という疑問が出やすいことです。

会計検査院は、持続化給付金事業に関連して、サービスデザイン推進協議会が事務局業務を実施した複数事業について、そのほとんどが電通に再委託され、再委託費率がいずれも95%を超えていたと指摘しています。

こうした構造が報じられたことで、電通には「中抜き企業」というイメージがつきやすくなりました。

2. 公共案件・税金との関わりが目立つ

電通は、民間企業の広告だけでなく、政府や自治体、公共性の高いイベントにも関わってきました。

公共案件そのものが悪いわけではありません。

むしろ、大規模イベントや全国規模のキャンペーンでは、企画力、調整力、実行力を持つ大手企業が必要になる場面もあります。

ただし、税金が使われる案件では、民間企業の広告案件以上に透明性が求められます。

そこに再委託や多重下請けの構造があると、
「なぜ電通が間に入る必要があるのか」
「どこにいくら支払われているのか」
「税金が効率的に使われているのか」
という批判が出やすくなります。

この点が、電通に対する不信感につながっています。

3. 東京五輪をめぐる問題

電通のイメージに大きな影響を与えたのが、東京2020オリンピック・パラリンピックをめぐる問題です。

公正取引委員会は、東京2020大会に関するテストイベント計画立案等業務などについて、入札参加業者に対する排除措置命令および課徴金納付命令等を発表しました。その中で、電通グループが特定テストイベント・本大会業務の受託事業を営んでいた者として記載されています。

電通グループ側も、2025年6月に公正取引委員会から課徴金納付命令を受け、子会社の電通が排除措置命令および課徴金納付命令を受けたことを公表しています。なお、電通グループは一部について認識の相違があるとして、取消訴訟を提起する方針も示しています。

このようなニュースは、一般消費者にとってかなり印象が悪くなりやすいです。

特に五輪のような国民的イベントでは、税金や公的資金への関心も高くなります。そのため、電通に対して「巨大広告代理店が公共案件で強すぎる」というイメージが広がりました。

4. 影響力が大きすぎるように見える

電通は、広告、テレビ、新聞、スポーツ、イベント、エンタメ、官公庁案件など、幅広い分野に関わっています。

そのため、世間からは
「流行を裏で作っている」
「メディアに強い影響力がある」
「大きな案件は結局、電通が持っていく」
というイメージを持たれやすい会社です。

実際には、広告会社は顧客企業の依頼を受けてマーケティングを支援する立場です。

しかし、電通の場合は規模が大きく、関わる案件も目立つため、良い意味でも悪い意味でも「裏で動かしている会社」という印象を持たれやすいのです。


では、本当に「中抜きだけ」で儲けているのか?

ここは少し冷静に見る必要があります。

電通が嫌われる理由として「中抜き」のイメージは強いですが、電通の仕事をすべて中抜きと表現するのは雑です。

大規模な広告キャンペーンやイベントでは、全体設計、予算管理、メディア交渉、制作進行、権利調整、品質管理、リスク管理など、多くの調整業務が発生します。

これらをまとめるプロジェクトマネジメントには、確かに価値があります。

たとえば、全国規模のキャンペーンを実施する場合、テレビCM、Web広告、SNS、店頭販促、イベント、PR、インフルエンサー施策などを同時に動かす必要があります。これを一社で管理するのは簡単ではありません。

その意味で、電通が間に入ること自体には合理性があります。

ただし、公共案件や税金が関わる仕事では、
「その管理費は妥当なのか」
「再委託先の選定は適切なのか」
「業務内容は透明なのか」
という点が厳しく問われます。

つまり、電通の問題は「中抜きだけで儲けている」という単純な話ではありません。

より正確には、
巨大な調整力を持つ会社だからこそ、大規模案件を受けやすい。一方で、その構造が外から見えにくいため、中抜き批判を受けやすい
ということです。


電通の業績は?2025年は大赤字

電通グループの2025年12月期決算は、かなり厳しい内容でした。

2025年12月期の収益は1兆4,352億円、売上総利益は1兆1,975億円でした。一方で、営業損失は2,892億円、親会社の所有者に帰属する当期損失は3,276億円となりました。

かなり大きな赤字です。

ただし、ここで重要なのは、赤字の中身です。

電通グループの赤字は、主にのれんの減損損失によるものです。

のれんとは、ざっくり言えば、企業買収のときに発生する「上乗せ価格」のようなものです。

たとえば、ある会社の純資産が1,000億円なのに、将来の成長性やブランド価値を見込んで1,500億円で買収したとします。この差額の500億円が、会計上の「のれん」として扱われます。

ところが、買収した会社が想定ほど成長しなかった場合、
「この会社にそこまでの価値はなかった」
と判断され、のれんの価値を引き下げる必要があります。

これが、のれんの減損です。

電通は過去に海外企業を積極的に買収してきました。しかし、海外事業の一部が期待通りの収益を出せず、のれんを大きく減損することになりました。

その結果、会計上の大きな赤字が発生したのです。


赤字でも本業は大丈夫なのか?

電通を見るうえで大事なのは、最終赤字だけで判断しないことです。

2025年12月期は、親会社の所有者に帰属する当期損失が3,276億円の赤字でした。

しかし、調整後営業利益は1,725億円でした。

調整後営業利益とは、減損や構造改革費用などの一時的な要因を除いて、本業の実力を見やすくした利益指標です。

つまり、電通は2025年に大赤字を出しましたが、広告・マーケティング・DXなどの本業が完全に赤字化しているわけではありません。

ただし、安心しきってよいわけでもありません。

なぜなら、のれんの減損は「過去の買収が想定ほどうまくいっていない」というサインでもあるからです。

特に電通の場合、海外事業の立て直しが大きな課題です。

中期経営計画でも、過去のM&A偏重の成長戦略を見直し、オーガニック成長、つまり買収に頼らない自力成長へ回帰する方針を示しています。

これは前向きな方針である一方、過去の海外M&A戦略に課題があったことの裏返しでもあります。


2026年は回復している?

2026年1〜3月期を見ると、電通グループは黒字に戻っています。

2026年12月期第1四半期の収益は3,571億円、売上総利益は2,950億円、営業利益は649億円、親会社の所有者に帰属する四半期利益は401億円でした。

前年同期の親会社の所有者に帰属する四半期利益は62億円だったため、利益面では大きく改善しています。

また、電通グループは2026年度について、親会社の所有者に帰属する当期利益697億円への黒字転換を見込んでいます。

ただし、注意点もあります。

電通グループは、2025年度の期末配当・年間配当を無配とし、2026年度の年間配当も無配予想としています。理由は、のれん減損により、電通グループ単体の分配可能額が大幅なマイナスとなったためです。

株式投資の観点では、業績が黒字に戻るかだけでなく、将来的に復配できるかも重要なポイントになります。


電通の株価は?

電通グループの株価は、2026年5月27日時点で3,091円です。前日比は+30円、年初来高値は3,552円、年初来安値は2,642円となっています。

株価を見るうえでは、以下のポイントが重要です。

注目点内容
業績回復2026年に黒字転換できるか
海外事業米州・EMEA・APACの立て直しが進むか
日本事業国内の広告・デジタル・DXが堅調に伸びるか
配当2025年度・2026年度は無配予想
減損リスク追加の大きな減損が出ないか
信頼回復公共案件やガバナンスへの不信感を払拭できるか

特に、無配は個人投資家にとって大きなマイナス材料です。

一方で、赤字の主因が一時的な減損であり、2026年に利益が戻るなら、見方が変わる可能性もあります。


電通は今後どうなる?

電通の今後を見るうえで重要なのは、次の3点です。

1. 日本事業の強さを維持できるか

電通の土台は、やはり日本事業です。

日本では、大企業との関係、広告・メディアへの知見、イベント運営、スポーツ・エンタメ領域など、電通の強みがまだ残っています。

この日本事業が安定していれば、グループ全体の基盤は簡単には崩れません。

2. 海外事業を立て直せるか

最大の課題は海外事業です。

2025年の大赤字は、海外事業に関連するのれん減損が主な理由でした。

今後、米国や欧州などの海外事業で収益性を改善できるかが、電通グループの評価を大きく左右します。

中期経営計画でも、競争環境の激化やテック企業・コンサル企業との競争を踏まえ、事業ポートフォリオを見直す方針が示されています。

3. 「広告代理店」から「成長支援会社」へ変われるか

広告業界は大きく変わっています。

昔は、テレビCMや新聞広告など、マスメディアを押さえる力が広告代理店の強みでした。

しかし現在は、Google、Meta、Amazon、TikTokなどの巨大プラットフォームが広告市場で大きな存在感を持っています。

企業側も、自社でデータを持ち、自社で広告を運用するケースが増えています。

そのため、電通は単に広告枠を売る会社ではなく、データ、テクノロジー、クリエイティブ、コンサルティングを組み合わせて、企業の成長を支援する会社へ変わる必要があります。

この変化に成功できるかが、電通の将来を左右するポイントです。


まとめ:電通は「広告代理店」ではなく、企業の成長を支援する巨大マーケティング会社

電通は、単なる広告代理店ではありません。

現在の電通は、広告、マーケティング、デジタル、DX、コンサルティング、スポーツ、エンタメを組み合わせて、企業の商品やサービスが売れる仕組みをつくる会社です。

一方で、電通にはネガティブなイメージもあります。

特に、公共案件における再委託構造や、東京五輪をめぐる独占禁止法関連の問題によって、
「中抜きしているのではないか」
「公共案件に強すぎるのではないか」
「巨大広告代理店として影響力が大きすぎるのではないか」
という不信感を持たれやすくなっています。

また、2025年12月期には3,276億円の最終赤字を出しました。

ただし、その主因は海外事業に関するのれん減損であり、本業の実力を示す調整後営業利益は黒字でした。2026年1〜3月期も黒字に戻っています。

つまり、電通は「終わった会社」ではありません。

しかし、昔のように「日本最強の広告代理店だから安泰」と単純に見られる会社でもありません。

今後は、
日本事業の強さを維持できるか
海外事業を立て直せるか
中抜き・公共案件のイメージを払拭できるか
広告代理店から企業成長支援会社へ進化できるか

が重要になります。

電通を理解するうえでは、派手な広告会社というイメージだけでなく、
広告業界の構造変化、海外M&Aの失敗、公共案件への不信感、そしてDX・デジタルへの転換
をセットで見ると、会社の実態が分かりやすくなります。


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